コペンハーゲン便り23(学校訪問5-5)
Tolne Efterskoleの最終回です。
本校にとって何が課題となっているのでしょうか。
副校長によると、本校の学校予算も十分とはいえないが、公立学校の予算が非常に厳しくなっているとのことです。国からの特別支援学校に対する補助金が少なく、教育予算が厳しくなっている中、生徒に補助を付けてスペシャルエフタースコーレに送ることは財政面から見て魅力がない。そのため、自治体によっては生徒を出したがらないところもある。いま国の教育政策はできるだけ早く学校を通過させていくことを求めるようになっている。しかし、この子たちにはむしろ学校に通う期間の延長が必要だ。本校の経験を通じて生徒の生活は変わり、卒業後も成長することができる。自治体には本校の教育実践の意義、効果についてもっと理解を深めてもらいたいと副校長は言います。
学校監査でdocumentation(文書提出)が求められ、アウトカムを数字で示すよう要請されるが、これも本校にとっては大きな問題だということです。Niller先生は、入学当初は自分から挨拶をできず、不安を抱えながら毎日を過ごしていた生徒がある日を境に自分から挨拶をし、いろいろなことを話せるようになり、いつも笑顔でいられるようになった例をあげてくれました。生徒のこうした小さな成長のステップをきちんと見なければならない。数値測定が学校に求められているが、私たちは言葉での評価を残していきたいと言います。
卒業後の子どもたちの進路をどう見つけるかが大きな課題となっているということも聞きました。本校の生徒は通常の高校や職業学校に進学するのは難しく、生産学校でも難しい。また10年ほど前にSTU(Særligt Tilrettelagt Ungdomsuddannelse、Special designed education)が法制化され、特別支援を要する者に義務教育後3年間学ぶ権利を保障することになった。しかしこの場合、自治体との進路プランの作成の際に経費が問題になることがある。
進路はworking branchに進む生徒が多い(1日2時間だけ働くが、国と自治体の補助金があって1週間分の賃金が支払われる)。しかしグローバリゼーションによって簡易な仕事は国外に出て行ってしまい、本校生徒たちが働けるような仕事を見つけるのが難しくなっている。
実際のところ、卒業生の中には非常に厳しい状況で暮らしている者もいるとのことです。困難な状況に陥る者が出れば、結局多くの税金を使うことになる。だから若いときに彼らをもっとしっかりとサポートする必要がある。本校のような学校に1~2年間行くことはとても有意義だということを自治体と国によく分かってもらうことが最も大きな課題だ。副校長とNiller先生はこんなことを熱を込めて語ってくれました。
帰りも車で駅まで送ってもらう予定でしたが、時間が延びたため、生徒たちが帰宅する時間に重なりました。それで私も生徒たちのバスに同乗させてもらって駅まで行きました。生徒の1人は私が間違うといけないと、途中まで電車にも一緒に乗ってくれました。電車である生徒にTolne Efterskoleの好きなところを聞いたら、即座に「Friend」と返ってきたのが強く印象に残りました。
今回、スペシャルエフタースコーレの教育を垣間見ることができました。その存在は、エフタースコーレが特定の恵まれた子どもたちのためだけにあるのではなく、障害のある子どもたちの学びと成長、そして将来を支える大きな役割を果たしていることを教えてくれます。同時に、福祉国家デンマークと言えども、厳しい状況に置かれている子どもたちもおり、その子どもたちを支える奮闘が日々なされている現実もしかと見ておかねばならないと感じた学校訪問でした。
(写真、生徒たちが書いた絵 Tilled til at springe飛翔する自信、Ansvarlighed責任、Respect,、Tolerance)。